第二章:経営学における従業員の健康問題
2.1. ヘルシーカンパニーを超えて
・1986年 R.ローゼン『ヘルシーカンパニー』
・健康管理と経営管理が分断されていることを批判し、両者の統合を主張
・メンタルヘルスに注目
・従業員のライフスタイルと職場環境双方に注目
・現在の健康経営に受け継がれている部分も、取り残されている部分もある。WB経営はローゼン教授の主張に再注目するもの。
▼何が取りこぼされているのか???
2.2.フィラデルフィア調査
・負担の重い労働条件による離職に対応するためのアクションリサーチ
・休憩など労働環境の整備の重要性とそれが業績に及ぼす影響の可能性、健康を経営管理の問題と捉える。
2.3. ホーソン工場実験
・同上の知見
2.4.人間モデルの転換
・経営学における健康への関心が衰退
・背景:マクレガーによるY理論:人間は自ら目標のために努力する
⇒従業員の積極的意欲を引き出すことに焦点
2.5.動機づけー衛生要因理論
・Y理論と類似、動機づけ要因、仕事そのものこそが高い満足をもたらすという見方
・労働環境、人間関係は不満足を予防する衛生要因に留められる。
・70年代以降、職務設計とモチベーションの研究に焦点が集まる。
2.6. 見過ごされた健康への眼差し:デイリーモチベーション調査の分析結果を元に
・著者らは過去、日常レベルのモチベーションとその理由を、毎日の就業時間間際に記録してもらう3週間の調査を行った。
・そこでは、天候や体調など直接管理しづらい要因が10%程度、モチベーションの増減の要因(33件)としてきされていた。それらの要因は、低いモチベーションの要因(25件)として語られることが多かった。
▼感想
・必ずしも動機づけ衛生要因理論は実証的支持を得られておらず、近年研究で取り上げられることは稀であった。必ずしもこの理論だけが経営学における健康への関心の低下の原因となったわけではないのでは。
・モティベーションに関しては理論が山ほどあるのに健康に関して経営学の理論があまりないように見えるのは不思議。
・経営学の中でも、産業組織心理学や組織行動論は心理学の研究の影響が強い。特に目に見える反応に注目する行動主義が産業心理研究の中で時代遅れのものとされ、認識に関心が集まった1970年代後半において、身体的なものは心理学系の経営研究者にとって扱いづらい対象、そもそも分析対象外だったのかもしれない。