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経営学研究者のノート:企業と社会の調和、ウェルビーイングを目指して

森永雄太(2019)『ウェルビーイング経営の考え方と進め方 健康経営の新展開』(株)労働新聞社 :「はじめに」「1章」の概要  2023年7月6日 

森永雄太(2019)『ウェルビーイング経営の考え方と進め方 健康経営の新展開』(株)労働新聞社 :「はじめに」の概要  2023年7月6日        

はじめに

【イントロ・鍵概念の提示】

<導入>

ウェルビーイング:「幸福感や満足感があり、それほど大きな悩みもなく、身体的精神的に健康で、生活の質も高い状態のこと」 本書p.i アメリカ心理学会 心理学大辞典

・従来の健康経営… 経営効果を重視せず、不調になった従業員の回復が焦点

・WB経営… 業績向上

<WB経営の特徴>

・「健康とは、病気でないことや弱っていないことではなく、肉体的・精神的・社会的に完全に満たされた(ウェルビーイングな)状態」 本書p.ii

・3つの特徴

 ・仕事に対し前向きに取り組むことを促す

 ・個人ではなく組織全体の課題に注目

 ・セルフマネジメント、自らウェルビーイングな状態を作り出せる人材育成

※甘やかすのではなく、自己管理をし活力を仕事に向けることを求める。結果、従業員のヘルスリテラシーの向上、良い人生への効果も見込まれる。

【問いの提示】

<本書で取り上げる3つの疑問>

  • なぜいまウェルビーング経営に取り組むべきか
  • 先進事例から何を学ぶか
  • どのように始めるか

【構成】

<健康経営の新展開としてのWB経営>

・Ⅰ部:この20年ほどで健康経営が注目 その背景、研究の流れ

<先進事例に学ぶ>

・健康経営の先進企業がすべてWB経営の先進事例だとまでは言えない。

・本書Ⅱ部ではWB経営成功例に近いSCSKとフジクラの事例を扱う。

<HHHの会での実践から>

・Ⅲ部:Human Health Hapinesst の会 攻めの健康経営の研究会からの知見を紹介

ウェルビーイング経営を展望する>

・Ⅳ部:WB経営を浸透させるための体系的取り組み、必要な担当者のスキル

<想定読者>」

・健康経営、WB経営に興味のあるすべての人、経営者、担当者、人事、コンサル・専門職、研究者

 

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「第1章:健康経営とはなにか」

  • 1 健康経営とはなにか

・健康経営 岡田邦夫「利益を創出するための経営管理と、生産性や創造性向上の源である働く人の心身の健康の向上をめざして、経営の視点から投資を行い、企業内事業として起業しその利益を創出すること」

▼健康経営も本来は経営効果を狙うもの 健康経営は商標登録済み

・2018年 健康経営銘柄 26社選定 

▼2023では31業種49社⇒1業種1社でなくなる https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230308003/20230308003.html

・健康経営優良法人制度:中小も対象、大規模法人部門はホワイト500

1.2.健康経営に期待される成果

 ・医療費削減

 ・メンタルヘルス対策

 ・業績…プレゼンティーズム

 ・ブランド…人材募集、資金調達

1.3.健康経営を始める、1.4.健康経営は一連のプロセス

経済産業省 商務情報政策局ヘルスケア産業課「企業の「健康経営」ガイドブック」https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkokeiei-guidebook2804.pdfを参照

・自社の健康経営の課題の把握

・様々なレベルでの連動した取り組み

  • 経営理念・方針:トップのメッセージ発信
  • 組織体制:担当者の知識、他部門の協力
  • 制度・施策実行:経営陣のリーダーシップ、産業保健部門と人事の協力
  • 評価・改善:複数の時間軸で
  • 法令遵守・リスクマネジメント

※推進者の悩み:1,2にトップの理解が得られない、3,4の質向上⇒健康経営の浸透を示す

1.5 健康経営評価:構造・過程・成果

 

「企業の「健康経営」ガイドブック」p.12から引用

 

※プロセスは単年度の施策実施場供養やそれに伴う変化

 成果はより中長期のもの

 

1.6.健康経営の「過程(プロセス)の評価」

 

「企業の「健康経営」ガイドブック」pp.23-24から引用

※課題把握に関して、ガイドブックとして列挙しているが、自社の経営課題に合わせて、場合によっては独自の指標も合わせてチェックすることが重要

※対応・施策実施 :ハイリスクアプローチ(生活習慣病の高リスク群など)、ポピュレーションアプローチ(従業員一般、この取り組みは制度利用が一部従業員にとどまるなど課題があることが多い)

※効果検証として、ワーク・エンゲージメントは業績とメンタルヘルスの両立に向けた鍵概念。ここも今後、力を入れて取り組むべき。このような業績に関連する指標の活用はまだまだ。

▼感想

・健康経営とWB経営には実質的な意味の差異がないように思える。

・職務満足に関連する研究、職務特性理論やハーズバーグの動機づけ要因など、およびそれに基づく実践(職務拡充、ジョブ・クラフティング)など仕事そのものに注目した分析などを健康経営の研究と実践がどのように継承したのか、あるいはしなかったのか、は疑問。

 

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